無線環境の不安定時の切り分け方法

Seungmin
Meraki Employee

無線LANにて発生する不安定の事象につきましては、
AP自体の原因で発生する場合より無線LAN環境により発生する場合が多いです。
本記事では、無線環境の不安定事象について環境要因を切り分けする方法をご紹介させていただきます。

 

■ 接続されているクライアントの数
無線LAN環境は 有線の環境とは異なり、CSMA/CAの特徴上、half duplexとなり1つのデバイスとAPが
やりとりを行う際は、他のデバイスは待機するようになります。
そのため、接続する端末が多くなればなるほど、Airtime contentionが発生し、
クライアントのパフォーマンスは低下するようになります。
クライアントが利用するアプリにもよりますが、1つバンドに接続されているクライアント数が25台以上を超える場合、
パフォーマンスが低下する傾向がございます。

 

■ 必要とされる帯域幅の要件
規格ごとに定義されている最大 data rateにつきましては、
あくまでも理論値となり、control frame などの overhead を考慮していない
数値となり、実際の無線環境では、一般的には最大 data rateの半分の throughput となります。
また、channel bonding を利用しない (20Mhz)場合は、さらに30%ほど軽減させた
throughput が一般的にAPにて提供できる最大の throughput となります。

例えば、3ストリーム(MIMO 3*3)の 802.11 ac(5Ghz)の場合、最大 data rateは 289Mbps となりますが、
実際の無線環境では、144 Mbps、さらに channel bonding を利用しない (20Mhz)場合は~101 Mbpsとなります。
そのため、クライアント側より4Mbps ほどの帯域が必要とされる環境では、
約 25台ほどのクライアントが該当バンドを利用できますが、
高画質の動画ストリーミング必要となり、クライアント側より8Mbps以上の
帯域必要とされる環境では12台を超えるところからパフォーマンスが低下する傾向となります。

計算式
101 Mbps / 4mbps = 25.25台
101 Mbps / 8mbps = 12.625

 

■ブロードキャストするSSIDの数
SSID数が多くなればなるほど、Management Frame(Beacon frame, Probe response等)も共に増加するようになり、
その結果 AirtimeのOverheadが発生するようになります。

例えば、5つ以上のSSIDを同時に広報する場合、
全体のスループットの2割程もしくは、それ以上にパフォーマンスが低下する場合がございます。
そのため、1つのAPにて推奨される最大のSSID数は3つまでとなります。

クライアンとの利用が少ない環境の場合は、目的によっては5つ程のSSIDを広報することも可能ですが、
高密度無線LAN環境においては、少しでもスループットが低下する場合、ユーザへの影響が大きいため、
必ず3つ以下のSSIDを利用していただくことを推奨いたします。

[Multi-SSID Deployment Considerations]
https://documentation.meraki.com/MR/WiFi_Basics_and_Best_Practices/Multi-SSID_Deployment_Considerations

 

■ 2.4Ghz バンド利用時
2.4Ghz バンドにつきましては、5Ghz バンドは異なり、
日本で一般的に使用できるチャネルの数は3つ(一般的には1, 6, 11)のみとなります。
そのため、他の AP(他ベンダーのAP)にて同様のチャネル使用している可能性が高く、
結果的に該当チャネルの使用率が高くなるため、
2.4Ghz バンドに接続されているクライアントのパフォーマンスは低下する傾向となります。

また、2.4Ghz バンドにつきましては、Bluetooth や、無線マウス、電子レンジ、他の無線デバイス
においても多く使われるため、比較的に干渉が発生しやすいバンドとなります。
そのため、2.4Ghz バンドを導入する前後では必ずサイトサーベイを実施していただき、
無線環境の電波状況を確認して頂ければと思います。
2.4Ghz利用において環境の改善が難しい場合は、5Ghzのみ利用していただくことを推奨します。

干渉を起こす原因となる一般的なソースの一覧は以下のページをご参照して頂ければと思います。
[Common Sources of Wireless Interference]
https://documentation.meraki.com/MR/WiFi_Basics_and_Best_Practices/Common_Sources_of_Wireless_Interf...

MRにておいては以下のページよりリアルタイムでチャネル使用率及び、干渉をご確認いただけます。
ワイヤレス >> アクセスポイント>> 特定AP >> [概要]タブ画面 >> 現在のチャネルの利用率
Picture 1.png

 

■ パワーミスマッチ

カバレッジを確保のためにAPの電波強度を最大値にする場合がございますが、
APの電波強度を強くする(最大値にする)ことで、遠い所でもAPからの信号は
クライアントより検知できるようになりますが、
クライアントの場合、発信できる電波の強度はAP程強くないため、(バッテリの保存の理由等で)
APからは無線クライアントの戻りのフレームが確認できなくなる可能性がございます。
その結果、APはクライアントからのフレームが受信できず、
Re-transsmissionを繰り返し、無線LANの全体的なパフォーマンスが低下する場合がございます。

また、逆にAPの電波強度をMinimumに設定することや、
Auto Power 設定にて選択できる幅を小さくすることにより、
意図していないローミングが多発する可能性もございますので、
事前・事後のサイトサーベイを実施し、適切な電波強度・範囲を決めていただく必要がございます。

MerakiのAPでは以下のページより電波強度の設定が可能です。

ワイヤレス >> 電波設定 >> 該当APのターゲット出力を選択(手動設定)

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ワイヤレス >> 電波設定 >> 該当プロファイルを選択(Auto範囲設定)
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■ Legacy device と Data rate

802.11 無線LAN環境では、CSMA/CA方式により
1つのクライアントがバンドを利用している場合は
他のクライアントは待機するようになります。

また、802.11 無線LAN環境では規格よって様々なdata rateで通信を行うため、
古いデバイスは比較的に遅いdata rateを利用し、
新しいデバイスは比較的に早いdata rateを利用するようになります。

そのため、無線LAN環境おいて、遅いdata rateを利用する端末が多く存在すればするほど
データを送信するまで時間がかかるようになり、
結果的に無線LAN環境の全体的なパフォーマンスが低下するようになります。
特に高密度無線LAN環境では、古い規格のデバイスの接続させないことが大事です。

MerakiのAPでは以下のページよりAssociation時の必要とされるMinimum bitrate
高く設定することで、遅いdata rateを利用する端末の接続を事前に防ぐことができます。
ワイヤレス >> 電波設定 >> 該当プロファイルを選択 >> 最小ビットレート

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■ 有線側による問題

無線LAN側より発生した Traffic も結局は、上位の有線側を通ることになるため、
有線ネットワーク環境のどこかでボトルネック、もしくはルーティングパケットドロップ等の問題が発生している場合は
必然的にAPに接続されているクライアントにも影響が発生するようになります。


そのため、上位の有線側の問題か、無線側の問題かを切り分けするために
不安定の事象発生時に以下の方法で切り分けを実施していただければと思います。

・APが接続されている SWにて直接クライアントを接続した際には通信に問題がないか。
・APの無線側のパケットキャプチャー、有線側のパケットキャプチャーを取得し、
 有線側にてすでにパケットがドラップ発生していないか。

 

■ VoIP Traffic

VoIP Traffic等、リアルタイムで通信が必要とされるTrafficの場合、
安定したSNR適切なローミングパケットの優先度設定等が重要な要素となります。

・安定したSNR

 無線通信においては、データ送信を行ってから対向側より必ずAckを受信する必要がございます。
 SNR数値が低い場合は、対向側よりAckが受信できない場合が多くなり、
 結果 re-transmission (再送信)が頻繁に起きるようになります。
 Fileのダウンロード等のトラフィックにつきましては、ある程度
 re-transmissionが発生した場合でも、最終的に全てのデータが送信できれば、
 ユーザ側からはあんまりパフォーマンスの問題を感じませんが、
 VoIP電話等、リアルタイムのトラフィック送信を要するアプリにおいては、
 少しでも re-transmission の比率が高くなる場合、声が途切れてしまい、
 ユーザ側よりパフォーマンスの低下を感じやすくなります。

 そのため、十分なSNR値が確保できるか確認する必要がございます。
 VoIPのアプリが利用される無線環境で、推奨される SNR値は、25dB 以上となります。

 SNR値は以下のページにてご確認いただけます。
 ネットワーク全体 >> クライアント >> 特定のクライアント選択 >> 信号
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SNRについての詳細は以下のKBをご参照して頂ければと思います。
 [Signal-to-Noise Ratio (SNR) and Wireless Signal Strength]
 https://documentation.meraki.com/MR/WiFi_Basics_and_Best_Practices/Signal-to-Noise_Ratio_(SNR)_and_...

・適切なローミング

 VoIP電話を利用している状況で、ユーザが移動をする場合、
 APから他のAPへローミングを行うようになります。
 その際に、AP間で適切なOverlap coverageが存在する必要がございますが、
 APの距離が遠すぎる場合、他のAPへ「ローミング」判定とならず、
 一度切断され、再度接続が行われるようになり、
 VoIPアプリの利用に問題となる場合がございます。
 一般的にOverlap coverageは 15~20%程となりますが、
 実際の環境では正確なcoverageを測定することが難しいため、
 VoIPアプリが利用される無線環境では、導入前後に VoIP Call テストを行なっていただくことを推奨いたします。

・パケットの優先度

 複数のアプリからTrafficが混雑している場合、
 デフォルトでは、均等にパケットが処理されるようになるため、
 比較的にVoIP アプリしているユーザの場合品質に問題を
 感じる可能性が高くなります。
 その際、VoIPのTrafficの優先度を上げていただくことで、他のパケットより処理が優先され、
 混雑している環境でも、VoIP Trafficの品質を保証することが可能となります。

 パケットの優先度設定は、以下のページより設定が可能です。
 ワイヤレス >> Firewall & トラフィックシェーピング >> トラフィックシェーピングルール
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 詳細の設定は以下のKBをご参照して頂ければと思います。

 [Traffic and Bandwidth Shaping]
 https://documentation.meraki.com/MR/Firewall_and_Traffic_Shaping/Traffic_and_Bandwidth_Shaping

 

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