MR 予期しない低電力モード(Unplanned low power mode)アラートの切り分け方法

TatsuyaN
Meraki Employee

 

MR 予期しない低電力モード(Unplanned low power mode)アラートの切り分け方法

本記事では、「予期しない低電力モード(Unplanned low power mode)」というアラートの概要と切り分け方法についてご紹介いたします。

お使いのデバイスにて本アラートが発生した際、本記事がトラブルシューティングの一助となれば幸いです。

 

TatsuyaN_0-1741095519495.png

 

 

本アラートの概要

本アラートは、MR のサポートしているPoE 規格と異なるPoE スイッチに接続した場合、起動時の電力ネゴシエーションやPoE SW のバジェット不足にて電力が不足した場合などに発報されます。

低電力モードは、通常、AP が全機能をサポートするのに十分な電力を受け取っていないフォールバックした状態を示しております。

 

 

本アラートのリスクと影響

リスクと影響:

  • 予期せぬ再起動のリスク:特にネットワーク負荷が高い場合、MR が予期せぬ再起動が発生する可能性があります。これは、十分な電力が供給されないことによって、デバイスが動作を安定して維持できないためです。

 

  • 機能への影響:電力消費を抑えるために、いくつかの機能に影響が及ぶ可能性があります。これには以下が含まれます。
    • Air MarshalAir Marshal に関する、MR の専用スキャン無線インターフェースが無効となる可能性があります。これにより、不正なデバイスやその他の無線脅威の検出や防止が行えない状態となります。
    • 無線:MR は、1つまたは複数の無線インターフェースを無効として、空間ストリームの数を減らす可能性があります。これにより、無線カバレッジやパフォーマンス、クライアント接続の処理能力を低下させることになります。
    • USB インターフェース:IoT などの外部デバイスをサポートするためのUSB インターフェースが無効となる可能性があります。

 

低電力モード時の動作については、MR モデルによって異なる可能性があるため、インストールガイド をご参照ください。

 

 

本アラートの主な原因

低電力モードの主な原因は、通常、物理的な問題であり、以下のようなものが考えられます。

  • 規格外のイーサネットケーブルの利用:規格外のイーサネットケーブルは、電力供給の不足につながる可能性があります。例えば、「IEEE802.3at」ではCat5e 以上のLAN ケーブルを使用しなければなりません。
  • PoE バジェット不足:PoE スイッチに接続されたデバイスが多く、電力負荷がかかりすぎており、電力バジェットが不足している可能性があります。
  • RJ-45 コネクタ、イーサネットケーブルの緩み:RJ-45 コネクタやイーサネットケーブルが緩んでいたり、正しく接続されていない場合、断続的に電力が供給されることがあります。これにより、MR の電力供給が不安定になり、低電力モードがトリガーされる場合があります。
  • RJ-45 コネクタ、イーサネットケーブルの損傷:RJ-45 コネクタイーサネットケーブルに物理的な損傷(破損、切断、ねじれ、過度な曲げなど)がある場合、電力供給が不足する場合があります。
  • 接続先スイッチにてLLDP が有効になっていない場合:電力ネゴシエーションの関係によってアラートが報告される場合があります。

 

 

本アラート発報時の基本的な切り分け方法

 

- POE の規格に沿ったケーブルを利用しているか。

例えば、「IEEE802.3at」ではCat5e 以上のLAN ケーブルを使用しなければなりません。

 

- MR の接続先デバイス、ポートで、CDP/LLDP が稼働しているか。

PoE+(802.3at)、PoE++(802.bt)などの規格の場合、追加の電力要求のためにCDP とLLDP の両方を使用して電力のネゴシエーションを実施する必要があります。

また、何らかの影響によって、起動処理の中で行われるPoE ネゴシエーション時に、CDP パケットがネゴシエーションの時間内に到達しない場合があります。

Meraki では可能な限り、接続先スイッチにてCDP と LLDP の両方を有効にすることを推奨しております。

Cisco switch でのLLDP の有効化については、ドキュメントをご参照ください。

 

 

- PoE バジェットが大幅に超過していないか。

接続先スイッチにてPoE バジェットの状況を確認します。容量が超過している場合は、接続しているPoE デバイスの接続数を減らした時に事象に改善が見られるかご確認ください。

Meraki MS をご利用の場合は、dashboard 上にてご確認をいただくことが可能となります。

 

ダッシュボードパス:「ワイヤレス > アクセスポイント > “アラート対象のMR” > 予期しない低電力モード: 詳細確認 > Suggested actions > 1. Check PoE budget」

TatsuyaN_0-1741100774667.png

 

ダッシュボードパス:「スイッチ > スイッチ > “接続先スイッチ” > 電源 > 割り当て」

TatsuyaN_1-1741101398902.png

※消費と割り当ての違いに関しては、ドキュメントをご参照ください。

 

 

- ケーブルテストを行い、物理ケーブルに問題が無いか。

ケーブルテストの結果に異常が見られる場合は、ケーブルを変更した後に事象に改善が見られるかご確認ください。

このテストを使用すると、10 Mbps または 100 Mbps リンク上のトラフィックが中断される可能性があります。ギガビット リンクには影響はありません。

Meraki MS をご利用の場合は、dashboard 上にてご確認をいただくことが可能となります。

 

ダッシュボードパス:「ワイヤレス > アクセスポイント > “アラート対象のMR” > 予期しない低電力モード: 詳細確認 > Suggested actions > 2. Cable test」

TatsuyaN_4-1741103362623.png

 

 

ダッシュボードパス:「スイッチ > スイッチ > “接続先スイッチ” > ポート > 対象ポート選択 > トラブルシューティング > ケーブルテスト

 

正常な結果

TatsuyaN_5-1741103699334.png

 

異常な結果

TatsuyaN_2-1741103316466.png

 

 


- 対象スイッチポートの再起動を実施して改善が見られないか。また、対象スイッチポートでパケットキャプチャの取得を行い、LLDP パケットのネゴシエーションに失敗していないか。

ケーブル再起動と同時にパケットキャプチャの取得を行い、改善が見られるかご確認ください。

改善が見られない場合は、LLDP パケットのネゴシエーションに失敗が見られないかご確認ください。

正常なLLDP パケットのサンプルは、ドキュメントをご参照ください。

Meraki MS をご利用の場合は、dashboard 上にてご確認をいただくことが可能となります。

 

ダッシュボードパス:「ワイヤレス > アクセスポイント > “アラート対象のMR” > 予期しない低電力モード: 詳細確認 > Suggested actions > 3. Cycle port on switch」

TatsuyaN_0-1741104406319.png

 

ダッシュボードパス:「ワイヤレス > アクセスポイント > “アラート対象のMR” > 予期しない低電力モード: 詳細確認 > Suggested actions > 4. Packet capture」

TatsuyaN_1-1741104420692.png

 

ダッシュボードパス:「スイッチ > スイッチ > “接続先スイッチ” > ポート > 対象ポート選択 > トラブルシューティング > ポートの再起動/パケットキャプチャ

TatsuyaN_2-1741104458155.png

 

 

- 802.3at/PoE+ 規格に準拠する前のスイッチ(Cisco Catalyst 2960,3560など)を利用している場合の注意事項

802.3at/PoE+規格に準拠する前のスイッチの一部は、デフォルトでは802.3at のフル出力をネゴシエートしません。

そのため、これらのスイッチ(Cisco Catalyst 2960,3560など)では、電源供給を行うスイッチポートを、手動で30W の電力が供給されるように設定する必要があります。

これは、スイッチのインターフェースに入り、次のコマンドを使用してインライン電力を30W に設定することで実行できます。

power inline consumption 30000

 

実際にMR に電源を投入する前に、この設定を行ってください。

この設定を行わない場合、低電力状態が続くことで、MR が継続的に再起動する原因となる場合があります。

 

 

- パッチパネルやJJ コネクタなど中継して接続しているのか、それともスイッチと直接接続となっているか。

パッチパネルやJJ コネクタなどを中継しない場合に場合に同様の事象が確認されるのか。

改善される場合は、中継デバイス側の問題や、ケーブルの長さなどに起因する問題と考えられます。

例えば、LAN ケーブル最大の長さは一般的に100メートルとされています。

 

 

- ケーブルの交換や接続ポートを変更した場合、改善は見られるか。

ケーブル接続先を変更した際に改善が見られる場合は、接続先ポートの問題の可能性があります。

その場合、他のデバイスを元の接続先に接続しても同様の動作が見られるか確認します。

他のデバイスでは見られない場合は、MR 本体のポートの問題の可能性があります。

 

接続先を変更しても改善しない場合、ケーブル自体の交換を実施して改善が見られるか確認します。

改善が見られる場合は、ケーブルやRJ-45 コネクタの問題の可能性があります。

 


- MR ならびにMS の再起動または初期化

一時的な問題によりネゴシエーションに失敗していたり、MR の内部プロセスに一時的な問題が発生している可能性もございます。

この点を切り分けるため、MR の「再起動」および「初期化」を実施いただき、事象が改善するかご確認ください。

「初期化」の方法につきましてはドキュメントをご参照ください。

 



切り分けを行っても原因箇所が不明、事象が改善しない場合

上記をご参考に全ての切り分けをご実施いただいても問題が解決しない場合、または何かご不明点がある場合は、お気軽にサポートまでお問い合わせください。

なお、その際はより効果的なサポートをご提供するため、実施済みの切り分け内容及びその結果をケースにてご共有いただけますと幸いです。

 

Cisco Meraki テクニカルサポート - Cisco Meraki Documentation
https://documentation.meraki.com/General_Administration/Support/cisco_meraki_support_jp

 

 

追加のリソース

Root Cause Analysis (RCA) - Alert Based Workflows - Cisco Meraki Documentation

Low Power Mode - Cisco Meraki Documentation

Low Power Mode on Cisco Switches - Cisco Meraki Documentation

MR57 Installation Guide - Cisco Meraki Documentation

Troubleshooting PoE on MS switches - Cisco Meraki Documentation